2012年に現地ガイド仲介として始まったマイリアルトリップが、累計ユーザー1000万人を突破し、2024年に初の年間黒字を達成した。2025年には前年比26%増の売上高1120億ウォンを見込む。単一のバーティカルから総合旅行スーパーアプリへの進化と、AIを活用した顧客体験の最適化は、起業家にとって重要な収益化のモデルケースとなる。
バーティカルからスーパーアプリへの進化
マイリアルトリップの成長軌跡は、初期のスタートアップがどのように市場を攻略すべきかを示す典型的な事例である。2012年に「現地ガイドツアー」というニッチな市場からスタートした同社は、確固たるコアユーザー層を獲得した後、航空券、宿泊施設、レンタカーなど旅行の全領域へとサービスを拡張した。単一のサービスで顧客の信頼を築き、それを基盤にクロスセルを促進することで、顧客生涯価値(LTV)を最大化したのである。これは、プラットフォーム起業家が初期からすべてを手掛けるのではなく、特定の課題を深く解決した後に周辺領域へ拡張すべきであることを示唆している。
12年越しの黒字転換が示す教訓
2024年の初の年間黒字達成は、スタートアップ業界に重要なメッセージを投げかけている。累計1000万人のユーザーを集め、2025年に1120億ウォンの売上を見込むまでに12年という歳月を要した。プラットフォームビジネスは、ネットワーク効果が働き、ユニットエコノミクスが黒字化するまでに長期的な資本投下と忍耐が必要である。特に旅行業界はコロナ禍という致命的な外部要因があったにもかかわらず、同社は国内旅行の強化とITインフラへの投資によって危機を機会に変えた。起業家は、外部ショックに備えた柔軟なピボット能力とランウェイ管理の重要性を忘れてはならない。
AIを活用した顧客体験の再構築
マイリアルトリップの現在のコアエンジンは「AIによる顧客体験の設計」である。膨大な旅行商品と1000万人のユーザーデータを組み合わせることで、単なる検索を超え、顧客の好みや状況に応じたパーソナライズされた旅行プランを提案している。これにより、ユーザーの検索コストを劇的に下げ、購買コンバージョン率を向上させている。また、内部的にもカスタマーサポート(CS)や運営の効率化にAIを導入し、固定費を抑制することで黒字転換の基盤を築いた。AIはもはや単なるバズワードではなく、プラットフォームの収益性を左右するインフラとなっている。
起業家のための戦略的アクション
第一に、バーティカルで始まりバーティカルで終わらないこと。初期はニッチ市場を攻略しつつ、最終的にはユーザーのカスタマージャーニー全体をカバーするスーパーアプリ戦略を構想し、LTVを高める必要がある。第二に、データ駆動型のAIパーソナライゼーションを導入すること。商品やユーザーが増えるほどキュレーションの質が低下しやすいため、AIを活用して超個別化された体験を提供し、リテンションを維持すべきである。第三に、運営効率に執着すること。売上の成長と同じくらい内部プロセスを自動化し、限界費用を下げることこそが、持続可能な黒字化への最短距離である。