プラットフォーム・コマース
Appleは規制の強い国でだけ手数料を下げる、アプリ起業家が今すぐ計算し直すこと
公開日: 2026-07-08
何が起きたのか
韓国の国会で、App Storeの手数料問題が再び持ち上がった。今回の論点は「高すぎる」ではなく「なぜ韓国でだけ下げないのか」だ。
数字が物語る。同じ代替決済の手数料を、米国のアプリ事業者には0%で適用し、EUではデジタル市場法(DMA)の圧力で実質17%水準まで下げたのに、韓国では依然30%だ。Appleが韓国で外部決済を認めた際の手数料も26%で、そこに決済代行の手数料が別に乗るため、30%から大きく改善したとは言い難い。
韓国は2021年、いわゆる「アプリ内課金強制禁止法」(電気通信事業法改正)で、世界で初めて外部決済を法で認めた国だ。ところが法は開いても手数料は動かなかった。Appleが規制の強さに応じて手数料を変えている、というのが今回の国会の指摘の核心だ。EUはDMAで支配的プラットフォームを事前指定し差別を禁じる強い法制があるから下げ、韓国はその強制力が弱いから据え置く、という構図である。
創業者にとっての意味
アプリで収益を上げる人にとって、この数字はマーケ費や人件費より先に計算すべき項目だ。サブスクでもアプリ内課金でも、売上の3割近くが最初からプラットフォームの取り分として抜かれるなら、単価も損益分岐点もまるで変わる。米国の競合が同じ商品を0%で売り、EUの競合が17%で売るなら、韓国の開発会社だけが30%の重りを付けて走ることになる。
痛いのは、これが「交渉可能なコスト」ではない点だ。サーバー費はトラフィックで、人件費はチーム規模で調整できるが、App Storeの手数料は開発側が手を出せない。規制という外生変数に縛られている。だから手数料率は個々の企業の実力ではなく、その国の規制環境で決まる。創業者が制御できない固定費が、損益の3割を先に持っていく。
ここで戦略が二つに分かれる。一つは決済の窓口をアプリの外に出すこと。Web決済、外部のサブスクページ、リーダーアプリの例外のように、手数料が低いかゼロの経路へ誘導する設計だ。ただしストア規約とアンチステアリング規定の間で綱渡りが必要で、規約は頻繁に変わる。もう一つは、そもそも収益モデルをアプリ内課金に依存させないこと。B2B契約、広告、オフライン連携のように、ストアを通さない売上の比率を高める方向だ。
今できること
- 今作っているアプリの価格表を「手数料30%控除後」の基準で計算し直す。サブスク価格にストアの取り分を上乗せするか、Web決済で迂回するかがここで決まる。
- 決済フローをアプリ内だけに置かず、Web決済の経路を並行して設計できるか、初期アーキテクチャの段階で検討する。後から付けるより最初から分けておく方が安い。
- 規制の流れを惰性で無視しないこと。DMAがEUの手数料を半分近くまで引き下げたように、韓国の法制強化の有無があなたの損益分岐点を直接動かす。
参考資料