AI・テクノロジー
導入率85.8%より先に決まっていたのは、出力をそのまま使わないという規則だ
公開日: 2026-09-19
要点
コンピュータエンターテインメント協会が9月17日に『CESA ゲーム産業レポート2026 プレビュー版』を発刊し、開発者調査と会員社調査を初めて一緒に掲載した。開発者の85.8%が業務で生成AIを使うと答え、会員社が運用対応として最も多く選んだのは、人が確認し修正し監修するという項目だった。
Mr. Latte の見方
導入率と運用規則が一冊に並んで載ったことが、今回の発表の中身そのものだ。会員社が選んだ方策は、使うツールを指定し、出力物をそのまま使わず、最後に人が見るという三つである。いずれも導入を決めたあとにしか出てこない文であり、期待する効果が業務効率化なら、その監修にかかる時間はそのまま成果の反対側に積まれる。ツールを選ぶより先に、この三つをどこに書き留めるかを決めるほうが安い。
会社が選んだ対応は、入口と中間と出口にひとつずつある
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が2026年9月17日、『CESA ゲーム産業レポート2026 プレビュー版』を発刊した。このレポートには CESA が2026年に実施した独自調査2件が初めて掲載されている。ひとつはゲーム開発者を対象に、もうひとつは CESA 会員社を対象にしたものだ。
会員社調査で生成AI利用の管理と運用対応を尋ねたとき、最も多くの回答を集めたのは、人が確認し修正し監修するという項目だった。そのほか、利用するツールを指定または制限するという方策と、出力物をそのまま使わないという方策にも多数が回答している。
この三つの項目は作業過程の別々の地点を指している。ツール指定は入口を狭める仕事であり、出力物をそのまま使わないという原則は作業の途中で働き、人の監修は最後の関門になる。入口と中間、出口に人がひとりずつ立っている構造だ。三か所を同時に統制するということは、会社側が導入と信頼を別のものとして見ている合図でもある。使うことはすでに決めたが、出てきた結果を信じるかはまだ決めていない。
開発者側の数字は、導入の議論が終わったと告げている
同じレポートの開発者調査では、回答者の85.8%が業務で生成AIを使うと答えた。内訳を見ると、日常的に使用しているという回答が63.0%、たまに使用しているという回答が22.8%だ。試験的に導入して検証中という答えは8.6%、一度も使ったことがないという答えは4.8%、以前は使っていたが今は使っていないという答えは0.7%だった。
この回答分布で目を引くのは63.0%と8.6%の差である。まだ検証中の人より、すでに毎日使っている人が7倍以上多い。導入するかどうかを決める段階はすでに過ぎていて、現場では昨日もつけ、今日もつける道具になったという意味だ。使用をやめた側は0.7%しかいない。使ってみてやめた人がほとんどいないという事実は、満足度が高いという意味ではない。一度作業の流れに入った道具は外しにくい。
二つの調査を重ねると食い違って見えるが、層が違う話だ。85.8%は開発者が自分の業務について答えた値であり、期待する効果と運用対応は会員社が会社の立場で答えた値である。開発者が毎日使っていることと、会社が成果物をそのまま出さないと決めたことは同時に成り立つ。
目標が効率化なら、監修の時間は成果の反対側に積まれる
会員社が生成AI活用で最も期待する効果として挙げたのは、業務効率化と生産性向上だった。新しい表現を作ることでも、人ができなかった作業をすることでもなく、すでにしている仕事を早く終わらせる側にある。
目標がそこにあるなら、導入後に残る問いも変わる。何を新しく作れるかではなく、この速さで作った成果物をそのまま出してよいかという問いが残る。成果を測る物差しも一緒に動く。何が新しく出たかではなく、同じ分量を何日で終えたかを見るようになる。この物差しでは、監修にかかる時間がそのまま費用として計上される。
ここで踏みやすい落とし穴がひとつある。ツール導入は契約書一枚で終わるが、監修規則を守るには人の時間がかかり続ける。導入効果を下書きの制作時間だけで測ると、その裏で増えた検収時間は帳簿に載らない。検収規則をどれだけ細かく定めるかが、導入の成果と噛み合っているということだ。
一枚の文書でいま決めておく三つ
この調査が経営側に渡すのはトレンドではなく、三行の文である。会員社が選んだ答えがそのまま三つの項目になる。第一に、使うツールを一覧にして、その一覧の外にあるものをどう扱うか書く。第二に、出力物をそのまま使わないという原則がどの成果物まで及ぶかを書く。第三に、最後に見る人は誰で、その人が通せない線は何かを書く。
三行を先に書いておく価値は後から現れる。5人のチームなら口約束でも回るが、外注と契約社員が加わった瞬間に同じ問いが戻ってくる。そのとき文書がなければ人ごとに違う答えを出し、成果物はすでに世に出ている。レポートが見せたのは、会社がその順序を導入より前に置いたという事実だ。
ただしプレビュー版の発表文だけでは区別がつかないものが残る。人が確認し修正し監修するという答えがどの工程を指すのか、ツールの指定と制限が社内規程なのか外注契約の条件なのかは、いま公開されている内容ではわからない。完全版は12月上旬に出る。どちらかによって、同じ一文を社内 wiki に書くのか契約書の別紙に書くのかが分かれる。