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モデルを選べるのが強みのFactory、Anthropicの契約予算でも買えるようになった
公開日: 2026-09-16
要点
AIコーディングエージェントのFactoryが9月15日、評価額50億ドルで2億ドルを調達した。4月の15億ドルから5か月で3倍超。直前にClaude Marketplaceに加わり、8月末には東京オフィス開設を発表した。
Mr. Latte の見方
Factoryは特定のモデルに縛られず、タスクごとにモデルを振り分けてコストを下げられる点を売りにしてきた。その会社が今月、Anthropicと結んだ利用契約の予算で買える製品になった。コーディングツールではClaude Codeを持つAnthropicが競合でもあるが、その契約台帳が大企業の予算に入る最短の販売経路になりつつある。東京に拠点を置いた以上、日本の大企業との商談でも、相手がすでにAnthropicと契約しているかが最初に確かめる項目になりうる。
5か月で15億ドルから50億ドルへ
企業向けAIコーディングエージェントを開発するFactoryは9月15日、評価額50億ドルで2億ドルを調達したと発表した。Blackstone、Khosla Ventures、Sequoia Capital、Insight Partners、Evantic Capital、Sound Ventures、NEA、Mantis VC、Clearlakeが参加し、累計調達額は4億ドルを超えた。資金は研究、製品開発、グローバルな市場開拓に充てるとしている。
TechCrunchによると、Factoryは今年4月、Khosla Venturesがリードしたラウンドで1億5,000万ドルを調達し、評価額15億ドルを付けていた。5か月で評価額は3倍を超えた。Factoryは2023年にMatan GrinbergとEno Reyesが創業した。当時UCバークレーの博士課程にいたGrinberg氏がSequoiaのShaun Maguire氏に自分からメールを送ったことが創業につながり、Sequoiaはシード段階から出資している。
顧客の顔ぶれも変わった。4月のTechCrunchの記事はMorgan Stanley、Ernst & Young、Palo Alto Networksを挙げていた。今回の発表ではNvidia、Blackstone、Royal Bank of Canada(RBC)、Palo Alto Networks、Adobe、T-Mobileが名前を連ねた。Factoryは数十万人の開発者が自社製品を使っているとしている。クラウドやオンプレミスに加え、外部ネットワークから完全に切り離した環境にも導入できる点を打ち出している。
Anthropicとの契約額で支払える窓口
資金調達の発表の6日前、9月9日にFactoryはClaude Marketplaceに加わった。Anthropicが3月に開いたこのマーケットプレイスでは、企業顧客がAnthropicと結んだ利用契約額の一部を、Claudeを使ったパートナー製品の購入に充てられる。パートナー製品の代金は契約額の一部から差し引かれ、請求はAnthropicがまとめて管理する。立ち上げ時の参加企業はGitLab、Harvey、Lovable、Replit、Rogo、Snowflakeだった。
Factoryは発表文で、別途の購買手続きが要らない点をこの仕組みの利点に挙げた。すでにAnthropicと契約を結んだ企業なら、Factoryを買うために調達手続きを一からやり直さなくてよいということだ。The Next Webはマーケットプレイスの立ち上げ時、Anthropicがこの方式を、クラウドの契約額をパートナー製品に回せるAWSやMicrosoft Azureのマーケットプレイスになぞらえていると伝えた。ただしAnthropicは、少なくとも立ち上げ時点では取引手数料を取っていなかった。
モデルを乗り換えられる会社が、一つのモデル企業の台帳に入った
この参加が目を引くのは、Factoryが掲げてきた強みのためだ。TechCrunchによると、Grinberg氏は4月、The Wall Street Journalに対し、AnthropicのClaudeや中国のDeepSeekなど複数の基盤モデルを行き来して使える点がFactoryの核心的な差別化要因だと語った。Factoryはタスクに応じてモデルを自動で割り振るFactory Routerも出している。難しい計画や診断には最上位のモデルを使い、検索や的を絞った確認作業は軽いモデルに任せる方式だ。
コーディングツールの市場で、Anthropicは供給者であると同時に競合でもある。4月のTechCrunchの記事は、Claude Codeを作るAnthropicをCursor、Cognitionと並べ、この市場の主導権を争う企業として挙げた。The Next Webもマーケットプレイスの立ち上げ時、Anthropicが自ら作った企業向け製品がパートナーのツールと一部重なると指摘している。立ち上げ時の参加企業にはReplitとGitLabも含まれていた。
Factoryの発表文によると、Anthropicと接続して使う企業は、すでに承認済みのAnthropic環境でClaudeを使いながら、コードの実行は自社のコードとインフラの近くに置ける。Anthropicのマーケットプレイス担当者は、Factoryを顧客がすでにAnthropicと結んでいる契約で購入できる製品だと紹介した。
削減率は文書ごとに違う数字が書かれている
ルーティングでどれだけ節約できるかは、Factoryの文書ごとに書き方が違う。今回の資金調達の発表文はトークン費用を60%超減らしたとしている。パートナーネットワークの発表文は、同じ品質でトークン費用を50%超減らせると書いた。ルーティング技術を解説した記事は、2か月以上顧客の作業に適用した結果、すべての呼び出しに最上位モデルを使った場合と比べて総コストが58%減ったとしている。同じ記事では、セッションごとの削減率の中央値は76%で、1回の応答にかかる時間の中央値は81秒から49秒に縮んだ。
比較の基準が明示されているのは58%だけで、すべての呼び出しに最上位モデルを使った場合との比較だ。すでに作業ごとにモデルを使い分けているチームなら、同じツールを入れても削減幅は小さくなりうる。同じ記事には、エージェントの作業をこなせるモデルの間で価格差が50倍を超えるとも書かれている。どのモデルを基準にするかで、削減率は大きく変わりうるということだ。
どれだけ費用を減らしたかとは別に、その費用で何を生み出したかも測る必要がある。Factoryは8月に「Agent Effectiveness」機能を出した際、エンジニアリングのリーダーはAIへの支出を増やしているのに、その支出が何を生み出しているのかにまだ答えられていないと書いた。この機能は課題管理ツールやソース管理ツールの記録をFactoryの利用セッションと結びつけ、AIの費用がどの作業と成果物につながったかを示す。
アジアの最初の拠点は東京
Factoryは8月31日、東京にオフィスを開き、アジアで事業を広げると発表した。日本事業のPresident & GMにはSeiji Sasaki氏を迎えた。Sasaki氏はOpenAI Japanで市場開拓を率いてサイトリードを務め、その前はSlackで日本と韓国の事業を率いるVP兼GMだった。Factoryはこの地域で営業、マーケティング、サポート、パートナーシップの人材を採用している。韓国オフィスの計画は発表に含まれていない。
アジアで企業向けAI製品を売る創業者にとっては、二つの変化が重なる。米国のコーディングエージェント企業が東京を拠点にこの地域の顧客獲得に乗り出したこと、そしてモデル企業との契約予算が販売の窓口になりつつあることだ。Claude Marketplaceは、大企業のセキュリティ、規模、コンプライアンスの要件に合うClaudeベースの製品を求めており、参加するにはパートナーの待機リストに申し込む必要がある。見込み客がすでにAnthropicと契約しているかどうかは、最初の商談で確かめる価値のある質問になった。
参考資料
- Factory raises $200M at $5B valuation Factory
- AI coding agent startup Factory triples valuation to $5 billion in latest funding round Reuters
- Factory hits $1.5B valuation to build AI coding for enterprises TechCrunch
- Factory now available on Claude Marketplace, bringing autonomous software development to the enterprise Factory
- Claude Marketplace Anthropic
- Anthropic launches marketplace for Claude-powered software The Next Web
- Why model routing must be in the harness Factory
- The Software Factory: Enabled by Partners Factory
- Introducing Agent Effectiveness Factory
- Factory Expands to Japan Factory